恩田プールに橋をかける

井上修志は2021年5月から滞在し、リサーチを重ねる中で既に閉鎖された市民プールへと行き着いた。現在、日本の地方では過疎化が進み使われなくなった施設や空き家の増加が問題視されている。井上はそれらの場所を作品として手を加え、問題意識の共有と地方の可能性を提案する。
現在ある空き家や施設の多くは放置され壁や屋根の荒廃は進み、その隙間から雨や風など外部の事物が部屋の内部に流れ込み始める。この状況は現在の地球規模で起こり我々の生活を脅かすほどの自然災害と人間生活の関係に似ているのではないかと井上は思った。
テクノロジーの進化が様々な事を現実可能にし、思うように作り出し変化させてきた。それは人間の都合に合わせるものであり、人間的尺度で世界を作り替える事でもある。ある側面ではその行為が地球規模の災害を引き起こすまでになってしまっている。我々は地球の一部で生活している。人間的尺度の世界で生活する我々はその事を忘れがちである。そしてある時、我々の世界に地球的規模の事物が災害として流れ込んできた時に自分たちがどこで生活を送っていたかこれまで何をしていたのかを理解する。今回のプロジェクトでは使われていなくなったプールを利用した空間制作を試みる。

アーティストは現在(2022/9)も実現の為に活動中である。

井上修志。東京藝術大学大学院グローバルアートプラクティス専攻修了。自身が持つ3.11の経験から社会の脆さや危うさ、また対峙する自然との構造に興味を持つ。公共空間に持ち込み、場所で物理的に規定される或いは場所へ依存する作品が多く、空間が持つ歴史や意味性を紐解き、日常生活で不要になった物や廃棄物などを素材とした彫刻作品やインステレーション作品を手掛ける。